『売上を、減らそう。』のレビュー記事です。
この本の著者は「佰食屋」の経営者である中村朱美さん。テレビの特集で大反響を呼んだので、知っている方も多いかもしれませんね。
この記事では、『売上を、減らそう。』をもとにして、飲食店経営で失敗しないための秘訣について考察していきます。
- 経営者として失敗したくない人
- 今の職場に疑問を感じる人
- 「売上を減らす?」そんなバカな…と思ったあなた
飲食店で失敗しないために『売上を、減らそう。』
飲食店経営の失敗例を分析すると、そのほとんどが
というパターン。
利益を上げなければ経営が成り立たないのに、それを追い求めすぎると潰れてしまう…。
なんとも皮肉な話ですね。売上を減らすべき理由は以下の通り。
- 売上を増やすと、労働時間だけが増える
- 残業せざるを得ない仕組み自体がダメ
- 売上を減らすと幸せになる
売上を増やそうとする先には、絶望しかないんですよね。
売上を増やすと、労働時間だけが増える
多くの経営者の方々は、売上を増やすために商品数や作業量を増やしがち。たくさん作って、たくさん売る。大量生産、大量販売です。
ただ、いくら商品数を増やしたところで、必ずしもすべて売れるとは限りませんよね。社員の労働時間ばかり増え、給料は変わらず…。
僕がこんな会社の社員だったら、たぶん辞めます。
残業せざるを得ない仕組み自体がダメ
売上を増やすための残業には、何一ついいことはありません。会社からしたら「残業代」という無駄な出費が増えるし、社員も消耗するだけです。
最近は「働き方改革」の影響もあって、以前よりはマシになりましたが、それでもなお残業に苦しむ社会人は多いはず。
残業せざるを得ない仕組み自体を変える必要があります(詳しくは後述します)
売上を減らすと幸せになる
これまでの話からも分かるように、
「売上を減らす」=「労働時間が減る」
です。
社員は定時で帰り、自由な時間を楽しめる。会社側も無駄な出費を抑えられる。
売上を減らしても、利益を出し続けることができれば、みんなが幸せになりますよね。
そんな夢のような経営方針を実現したのが、『売上を、減らそう。』に出てくる「佰食屋」という飲食店です。
売上を減らすことで成功した「佰食屋」とは?
『売上を、減らそう。』の舞台となった「佰食屋」について紹介します。
- 営業時間は、わずか3時間半
- 売るのは1日100食だけ
- 飲食店なのに残業ゼロ
こんなんで本当にやっていけるのか?って思いますよね。でも、実際にこんな夢のような飲食店が存在するんです。
佰食屋経営者の中村朱美さんは、
- 2015年に「京都市 真の『ワーク・ライフ・バランス』推進企業 特別賞」
- 2017年に「新・ダイバーシティ経営企業100選」
- 2019年に日産WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー 2019」最優秀賞
これまでの業績至上主義とは真逆のビジネスモデルを実現させた経営者として、最も注目される起業家の一人です。
『売上を、減らそう。』のレビュー
読みやすさ | |
実用性 | |
定価 | 1,500円 |
おすすめ度 |
- 「超ホワイト企業」のつくり方が分かる
- 売上を減らしても利益を出し続ける秘密が分かる
- 売上よりも大事なことが分かる
僕が飲食店を経営する際には、間違いなく読み直します。
「本当の成功とは何なのか?」
売上よりも大切な、「飲食店経営の本質」が分かる1冊です。
他にも様々な経営戦略が知りたい!という方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
<<【初心者向け】マーケティングが学べるおすすめ本5選【厳選しました】
「超ホワイト企業のつくり方」
佰食屋は、従来の業績至上主義とは真逆の働き方を取り入れることで、成功を収めました。
- 早く帰れる
- フードロスほぼゼロ
- 経営が究極に簡単
- どんな人も即戦力
- 売上至上主義からの解放
どんなに忙しい日でも、社員の退勤時間は夕方17時台。残業なんてありません。
フードロスをほぼゼロにすることで、経費削減に。「100食限定」という制限を設けることで、ロスを減らします。
「ここでしか食べられない」という価値を生み出すことで、経営も圧倒的に簡単に。
佰食屋が従業員に求めるのは「誰でもできる仕事」。わざわざやる気に満ちあふれた人を探す手間も必要ありません。
これらを実践することで、佰食屋は従来の売上至上主義から解放された、よりやさしい働き方を可能にしました。
売上を減らし、利益を出し続ける
一見すると矛盾しているようですが、佰食屋はこれを成し遂げました。
飲食店を経営するうえで大切な、「FLコスト」という指標があります。
- Fは「Food(原価、材料費)」
- Lは「Labor(人件費)」
この2つを合計したものが、FLコストと呼ばれるもの。飲食店を経営するうえで、必ず発生する費用のことですね。
FLコストを売上で割った「FL比率」を約50~55%に抑えるのが飲食店経営の鉄則ですが、佰食屋の場合、FL比率は驚異の80%…。
税理士や経営コンサルタントからしたら、「絶対に潰れます」というほど圧倒的な数値ですが、佰食屋はこれを可能にしました。
- 100食限定
- 広告費ゼロ
- 家賃を低く抑える
この3つを実践することで、FL比率80%が実現できます。
1日100食限定
佰食屋では、どんなに売れても100食限定というルールがあります。これにより、商品に希少性が生まれるわけです。
さらに、佰食屋の営業時間はわずか3時間半と驚異的な短さなので、これもまた希少性を生むポイントになります。営業時間が限られているため、光熱水費を抑えることができるというメリットも。
以上ような希少性と、佰食屋の圧倒的な商品力が相乗効果を生みます。
「安くておいしいけど、1日100食しか売ってない…。一度は食べてみたいな!」
佰食屋は、毎日コンスタントに100食売り続けることができるわけです。
広告費ゼロでも100食売り切る
佰食屋には、
- 【圧倒的な商品力】他の店よりも安くておいしい
- 【話題性】100食限定、営業時間は3時間半
このような、「SNSで話題になりやい」特徴があります。
佰食屋を訪れた人が、ブログやSNSにアップすることで、宣伝効果をもたらします。
ネット上で話題になると、当然テレビ局なども注目し始めます(実際に佰食屋はテレビ東京の「ガイアの夜明け」特集で大反響を呼びました)
ここで注目すべきは、佰食屋が広告費を一切使っていないということ。広告費ゼロでも、多くの人が佰食屋を知り、興味を持ち始めます。
圧倒的商品力があれば、広告費という無駄な出費を抑えられます。これまでのように、広告費をガンガン使って宣伝するというスタイルは、もはや時代遅れですね。
家賃を低く抑える
ポイントは、下記のような安くていい物件を見つけることです。
- 近くに大規模な集客施設がある
- 人や車が通るルートがある
- 公共交通機関から徒歩10分圏内
佰食屋の店舗は、どこも駅の近くにありますが、「一本路地を入った住宅街」や「市場の2階」など、ちょっと見つけにくい場所にあります。
このような立地だと、家賃を低く抑えられるので、固定費削減につながります。
通りすがりの人からの集客には若干難がありますが、佰食屋は口コミやメディアへの露出で集客するため問題なしです。やはり、圧倒的な商品力に勝るものはないようですね。
売上よりも優先すべきこと
佰食屋が従業員に求めるのは、「誰でもできる仕事」ができることです。
これにより、誰がどの店舗に行っても仕事ができるので、配属する際に人間関係を重要視できます。
売上を優先し、スキル重視で配属先を決めてしまうと、職場の雰囲気は最悪に…。最悪の場合、社員が辞めてしまうかもしれません。
退職・転職のハードルが下がったこの時代に経営者がすべきことは、「長く働いてもらうための職場づくり」ですね。
【感想】飲食店経営で失敗しないために大切なこと
『売上を、減らそう。』を読んで、飲食店を経営するうえで大切なことを学びました。
商売を始めるとなると、どうしても売上を優先してしまいますよね。僕も、『売上を、減らそう。』を読むまではそうでした。
「たくさん作って、たくさん売る」という時代は終わりに近づいているような気がします。これからは、「本当にいいものを、継続的に売る」ということの方が大事になると思っています。
この本で学んだ考え方は、飲食店経営だけでなくさまざまな場面で役に立つはず。
幸せになりたかったら、売上を、減らそう。
人生の本質的な部分が少しわかってきた気がします。
【まとめ】飲食店で失敗しないために『売上を、減らそう。』
飲食店経営で失敗しないためには、
- 営業時間を減らす
- 販売数を制限する
- 残業ゼロ
2019年、佰食屋は「働き方のフランチャイズ」を広めるため、さらに進化した「佰食屋1/2」をオープンしました。
1日50食限定なんて…大丈夫!?って感じですよね。
パワーアップした佰食屋の斬新な戦略が学べるので、気になる方は本書を実際に手に取ってご覧ください。
飲食店経営の本質が見えてきますよ!